鹿児島の薩摩地方はつげで知られる銘木薩摩つげの産地であり、指宿市の市木でもあります。
薩摩つげ櫛は江戸時代から「櫛になりたや薩摩の櫛に諸国の娘の手に渡ろ」とうたわれ、全国にその名を売ったほどです。
また、この地方では女児が生まれるとつげの木を植える習慣があったと言われています。
薩摩つげ櫛は、整髪料のない時代から一生ものの道具として、かつては嫁入り道具の一つとしても持参されていました。
つげは成長が遅いため年輪の幅が狭いことから、きめが細かく弾力があり、独特の黄色いなめらかなはだのつげ櫛は椿油を染み込ませて使用するため髪を梳くごとに自然な艶と潤いを与えます。
このように薩摩つげ櫛の伝統の底には人々の温かな心が息づいています。
静電気がおきにくい・髪に艶がでる・抜け毛や切れ毛がなくなる・カラーリングやパーマの繰り返しによるぱさつきがなくなる・天然パーマやくせ毛が落ち着く・うねりが落ち着く、などなど美しい髪に仕上げてくれる多くの効果が期待できます。
薩摩つげ櫛は、お使い頂き、初めてその価値が出ます。
始めに、毛先から徐々に梳いていただき、その後頭上へと上がっていきます。
最後に前頭部から後頭部へ大きく梳きます。
このように使用していただくことで髪のもつれを防ぐことが出来ます。
もともとつげの木は柔らかく、乾燥させる必要があります。最低でも10年以上は寝かせます。そうすることで櫛に落ち着きが出ます。木に「櫛にしてもいいか?」と問いかけ、木が『大丈夫!』と答えてくれたら、やっと製作の始まりです。
つげのおが屑を燃やした小型の炉に数日間入れます。
しっかり乾燥させることで、木が引き締まり、より櫛に適した材質になります。
原木の丸太を歯の長さに合わせた寸法に輪切りにし、割れやすい芯を除いて櫛型に製材します。
天日で自然乾燥させ、製材を隙間なく円状に丸めて寝かせます。輪締めと呼ばれる製法で、つげ櫛の制作にとって欠かせません。6年以上保管します。
かんなをかけて、歪みを調整します。
円盤状ののこぎりを使って一本ずつ櫛の歯を作っていきます。
櫛の歯を下から見たときに、丸みを帯びたひし型になるように、数種類のヤスリで丁寧に磨いていきます。
ヤスリの入れ方が櫛の通りを左右するため、ヤスリの入れ具合には細心の注意を払います。
櫛の持ち手の部分や両脇をカットし、櫛の表面をサンドペーパーで整えます。さらに持ち手の角を削り、全体もサンドペーパーで丁寧に調整していくと、丸みを帯びたやさしいフォルムとなります。
櫛を椿油に浸し、余分な油を落として乾燥させます。これを数回繰り返すことで、櫛の色合いに深みと艶がでます。